e-子育てモバイル・子育てのいろは(5)
e-子育てモバイル・子育てのいろは(5)

【子育ての秘訣/この人に聞く】
人生の先輩の考える子育てとは(5)
★相田みつを美術館 館長 相田一人氏

■物事は必ず両面から見ないと分からない P2

冬の縁側の陽だまりで話した記憶がよみがえります。「歴史も同じで勝者の立場から描かれた歴史と、敗者の立場から描かれた歴史は違うのだ」と父は言います。そうして平家物語の話になりました。「平氏の側から見れば源氏に滅ぼされたのだから平氏が正しくて、源氏は野蛮で知性も教養もない坂東武者だという話だけれども、源氏側から見れば平氏の方が悪いのだから、見方によって歴史の様子はガラッとかわるんだ」と言うのです。

それから最後に父は「自分は戦争を体験している。鬼畜米英で神国日本と教わって戦争したが、敗戦になったら180度ガラッと変わって、アメリカやイギリスは正しくて、日本が間違っていることになった」と。だから「物事と言うのは片方から見ただけでは絶対に分からないんだ。両面から見て正しい判断をしないとだめだ」としつこく言われました。

父はよく「担板漢(たんぱんかん)になるな」と言っていました。担板漢とは板を担ぐ男のことです。大きな板を担いでいると反対側が見えなくなります。だから片方からしか物が見えない物の道理が分からない人という意味です。今の世の中に大事なことだという気がします。画一的な物の見方が主流になってしまっているのではないでしょうか。

父がある晩年の講演でこのように話していました。「教養というものは、どれだけ相手の立場に立てるかということなんです」と。教養の定義は色々あるけれども、相手の立場からものを考えることができるということが、自分の思う教養であると力説しているテープが残っています。父の考えはずっと一貫していました。
羊(2009/10/13)



前に戻る
e-子育てモバイルTOPへジャンプ