子育ての秘訣

親の力向上委員会

こどもの生きる力を伸ばすために

連載3 今の若いお父さん、お母さんに子育てへの提言

暁星小学校のサッカー部の監督として子どもと向き合う経験を語って頂きました。

宮崎昇作 氏
宮崎昇作 氏

「つ」のつく教育の大切さについてお聞かせください。

暁星小学校のサッカー部の監督だけではなく、学校の先生もやっていました。実は幼稚園の先生も5年やりました。

その理由はこうです。小学校1年生では既に知力も体力も相当に差がついています。一般の人は小学校ぐらいならどの子も同じレベルだと思っているのではないでしょうか。ところが7歳ではもう挽回できないような差がついてしまっていることに気づいたのです。

そこでどの年齢まで下がればどの子も同じスタートラインに立って指導ができるのかという疑問が沸いたのです。そこで理事長にお願いして幼稚園で体育を指導させてもらったのです。

そうしたら、幼稚園でもすでに差がついていたのです。やはり『三つ子の魂百までも』という言葉通りです。一時胎教と言うことが言われましたが、生まれたときからでは遅いのかも知れません。

この胎教がブームになった時に、私はこれで日本も面白くなると思いました。というのは子どもの年齢が低ければ低いほど、育て方が大事だと言うことを分かっていましたから。

ジュニアのサッカー界ではJリーグや日本代表を目指すには、小学校三年生までが勝負だと言われています。

スポーツの分野では『ゴールデンエイジ』という言葉があります。ですが、他の分野ではあまり耳にしません。一番大事な時期をきちんと押さえているのは、一部のスポーツと芸能関係ではないでしょうか。

日本古来の芸事、歌舞伎や能など「六歳の六月六日がスタート」だったと思います。私の経験から考えると芸事をスタートする前にその準備段階として、人としての常識をそれまでに身につけさせていたはずです。


暁星幼稚園で年中で入園してきたときに、どのくらいの差がどんなところでついていたのでしょうか?

マット運動や鉄棒などでパッと見て、出来不出来がはっきりしていました。縄跳びにしてもそうです。練習不足のためにできないのではなく、いくら努力しても上達しない子どもがいるのです。

そういうトレーニングの差ではない、基礎的運動能力の差がついてしまっていると、それまで育ってきた数年間の差を取り戻すことは容易ではありません。

水泳でもスイスイ泳ぐ子どもと、水に顔をつけただけでも泣き出す子がいます。これはもう大きな差なのです。

これは運動面ばかりでなく知能の面でも同じです。幼稚園での差が小学校での学習面の差にもつながっているのです。

歌舞伎の世界と同じで、人間としても目標をしっかりもって育てしつけをしないと、子どもがかわいそう。人間の成長の重要な時期の過ごし方については昔の方がちゃんとしていたと思います。

今はお受験がありますが、お勉強さえできれば他人に迷惑をかけようが構わないという風潮は言語道断だと思います。六歳の六月六日までに人間としての資質をしっかりと押さえた上で、特定の分野に特化した教育をするのは構いません。

運動で言えば、中村俊輔が幼稚園でやっていた遊びがあります。彼の先生だった若林先生の話では、特別なことではなく総合的な運動をしていたそうです。でんぐり返し、平均台、けんすい、跳んだりはねたりという基本の運動です。その上でボールを蹴ったりドリブルをしました。

基本の運動をやっていれば、サッカーでも野球でもできる子どもになります。やり過ぎは体を壊します。

イチローもお父さんに直接話を聞いたところでは、二、三歳の時にプラスチックのカラーバットで新聞紙のボールを打っていたそうです。小学校3年生になるまで毎日やっていたそうです。毎日というところがポイント。

その後バッティングセンターで毎日ボールを打ちました。それまでに野球で必要な基礎練習、つまり走って捕ることをやっていたのです。また自然の多い中で育っているので、日常の遊びがトレーニングとなりました。


今の若いお父さん、お母さんに子育てへの提言

伸びる子はどんな子どもでしょうか?

ひとつは総合的な運動がどこまでできるか。サッカーで言えばどんなに上手くても足が遅いと大成しないし、接触プレーで跳ばされていてはダメ。基礎がないと伸びません。そういう子をずいぶん見てきました。

他の面でも同じです。人間としてのマナー、人に迷惑をかけないなど、基本的なことができないとダメです。成績だけ良くても限界があります。運動も、勉強も、芸術もどれも同じなんです。

都会でも運動はできます。マンションの階段の上り下りでも良いのです。中田英寿は幼稚園から九歳まで坂道を毎日片足ケンケンで登っていました。縄跳び、キャッチボールなど、やろうとすればできるはず。親のやる気次第です。

もう一つは躾です。人に迷惑をかけない、我慢ができる、順番が待てる、人に譲ることができる、そうしたことが身に付いている子です。

鼠(2010/1/12)

経歴

東京教育大学卒業。
元暁星小学校教諭(1968〜2007年)
元暁星小学校サッカー部監督(1971〜2007年)
元東京少年サッカー連盟会長(1998〜2006年)

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