子育ての秘訣
親の力向上委員会
こどもの生きる力を伸ばすために
東京目白にある川村小学校の若林雅子副校長先生に、子どものお手伝いの大切さについてお話頂きました。
子どもが家の手伝いをするのは,むかしは当たり前のことでした。子どもの数が多いので、下の子の世話をするのは上の子と相場が決まっていました。
昔の家事の苦労は,今の比ではありません。お風呂をたくのですら,かまどに誰かがつきっきりです。時々かまどの中をかきまわし薪を入れて火が消えないようにします。洗濯は洗濯板でごしごしと一枚一枚こすらなければなりません。気が遠くなるくらい重労働で手間のかかる仕事でした。今のようにボタン1つでできるなんて夢のような話です。
生活が便利になり,かつ子どもの数が少なくなって,子どもが家事を手伝う場面が減ってきました。何もしない子のほうが多いかもしれません。
子どもは勉強だけしていればいいということで、冷暖房完備の部屋にお母さんが夜食を届ける、空になった食器を運ぶのもお母さん、そんな感じで家事を一切手伝わせない、そんな家庭が増えています。勉強だけしていればいいのでしょうか。
子育ての基本は「自分のことは自分でできるようにする」ということです。その上での勉強です。自分のことを自分でできる子が、学んだものを社会に役立てることができるのです。
母親をお手伝いさんのように思ってそれを当然のこととするのは、何かが欠けています。欠けているものは、思いやりそして、一緒に生活する人へのいたわりかもしれません。それを教えるのも親の務めです。
家庭で発生する仕事はそこに住む家族全員が分担するのが基本です。これは、●●ちゃんの仕事、と一定の仕事を決めて分担させると良いと思います。そして、分担したことは少々のことがあっても責任をもってきちんとやらせることです。
「■■をやってちょうだい、●●ちゃんの仕事でしょう」というと「勉強しているからそんな暇ないよ」と子どもが言います。つい「わかったわ」と親が手を出してしまう。よくあることですが、そこで、仕事を1つやったくらいで勉強が遅れることはありません。むしろ勉強をだらだらやらず、勉強の密度が濃くなるはずです。
こんな時こそ、心を鬼にして子どもに自分の分担をやらせることです。そこは親も我慢、子も我慢です。いずれ社会に出たら大きな人間関係の中で仕事を分担し責任を持ってやらなければなりません。それが、できなければ、社会生活をおくっていくことはできません。何の分担もせず、何の責任も持たず人を頼るだけでは、社会で通用しません。
人間関係をつくるということは、その中で自分が一定の役割を引き受けるということです。やらなければいけないことがあったら、すぐにやる。そういう、子どもに育てることも家庭の役割だと思います。
子どもは親のすることをすぐに真似たがります。大人の真似をしたがり、大人に頼まれることが好きです。少し背伸びして「お姉ちゃんのできることが私にもできた。」と思うことが、何よりもうれしいのです。特に女の子は台所を手伝いたがります。その気持ちに水を差さないよう、出来ることはどんどんやらせましょう。
そのときは,あまり親が口を出したり、手出しをし過ぎないことです。小さい子どもがやることですから、大人からみればあぶなっかしいものです。だから、つい「お母さんがやるからいいわよ。」と言ってしまいます。これは、子どもの向上心や好奇心に水を差すようなものです。台所には包丁、火など危ないものがたくさんあります。「もういい、危ないからそっちへ行ってなさい」と、言わないでください。
仕事は火や包丁にさわるものだけではないと思います。お米をはかって釜に入れ、水を分量どおりいれスイッチをいれる。テーブルセッティングや片付けも良いと思います。
その時、少々こぼしても皿を割っても嫌な顔をしない。子どもは失敗を通して成長していくものです。お皿は両手で持たないと割れる。こぼしたら拭く、熱いから気をつけるなど失敗は気をつければ避けられること後始末も手伝いの一環であることを教えます。
絶対に叱ったりしない、教えてあげるのはいいが、親が手を出しすぎない。子どもが一人でできたという実感を得ることが大切。子どものやることは危なっかしいし、遅い。親がやる方が早い。そこが親の我慢のしどころです。そこで、我慢すれば、子どもの成長にプラスになるでしょう。(連載5へ続く)
鼠(2010/3/25)
経歴 |
川村学園女子大学卒業後、川村小学校で長年、教鞭を取られる。 |