子育ての秘訣
この人に聞く 連載第二回
人生の先輩の考える子育てとは

自己をしっかり持って、自分の考えを相手にしっかり伝えることが出来、常にwin-win(当事者共に利益を享受できること)を考える人材。自分が育った文化を相対的に見て相手文化を理解できる人。
国家公務員になる意識は全くなく、父の一生の仕事であった教育者も関心がなく、民間企業に就職することを漠然と考えておりました。法学部卒なのでメーカーに入っても理科系の人にはかなわないと感じて、金融か商社を希望。兄が当時三井銀行にいっている関係もあり同系の商社として、三井物産を選びました。入社時は海外で働くことへのイメージはまったくありませんでしたが、結果としてニューヨーク、北京、ニューデリーと18年ほど海外駐在を経験し、子供、妻には慣れない体験だったかもしれませんが、本当に良かったと思っております。会社での最後の勤務地はインド、ニューデリーで、退職と帰国が重なりましたが、幸い国立大学の総務担当理事の仕事に就くことが出来、商社経験、海外駐在経験などを活かして、大学改革を進めました。現在は商社経験、海外駐在経験、大学経営の経験を踏まえて私立大学の新学部の事務長をしております。亡父が小学校の教員でその後私立大学の講師をしておりましたので、知らず知らずの内に教育者であった父の領域にこの年になって関係するとは人生本当に不思議なものです。
かわいいのひとこと。幸い孫娘と孫息子がおり、3人とも伸び伸びと育っており、今後世界に羽ばたいて欲しいと思っております。現在はバンコックと大阪にいて、あまり会うチャンスがないので、さびしい限りですが、よく電話をくれるので、受話器に耳をつけて、言葉をしっかり聴いております。子供は息子2人です。インド駐在の時それぞれが自分で伴侶を決めました。子供たちが適齢期になり、結婚相手の話などが会話として出始めたころ、彼らには結婚は家族の輪が広がることで、2人だけのものではない。親として嫁さん以外にも相手のご両親と末永くお付き合いをしたいので、そのようなご両親かをよく見て欲しい。子供のときから親を見ており、われわれの性格等は分かっているはず、また親として教育はしてきたつもりなので、相手に関して一切反対はしないが、「楽しい輪」のことだけは考えて欲しいと伝えました。お蔭様で2人の伴侶のご家族とも仲良く交流しております。息子達への希望は孫たちにあふれる愛情を持って、きっちり躾をして欲しい。我々の時代、息子達が生きた時代を孫たちに伝えて欲しい。子供は親を良く見ているので、無意識でやっていることが子供にとってプラスになることもマイナスになることもあるので、言動には注意をするように。
子育ての楽しさの実感を味わって欲しい。少子化が進む中で、過度に干渉せず、親の姿勢を見せて欲しい。まずは夫婦が楽しく、一緒になって、努力して生活している姿を子供たちに見せて欲しい。妻も教職にあり、父の生前よく教育の話が話題になりました。ある時、妻が子育てで一番大事なのは何でしょうと尋ねると、父はひとこと、夫婦円満と答えたそうです。本当にそうだと常々思っております。
すでに述べましたが、夫婦円満で、日々真摯な姿勢で品位ある生活を心がけたいと思います。
自分は常に未完成であり、努力をすれば一歩は前に進むという信念を持ちたいです。
ごく普通の外遊びとスポーツの好きな子供。よく遊び、少し学びでした。
父親の勤めている小学校に通学していたこともあり、何をしても父親に筒抜けのように感じており、悪戯は出来ませんでした。でも一度放課後決められた時間以降も校庭で遊んでいて、先生としてひどく怒られたことがありました。中学校も同じ付属であり同じような感じを抱いていましたが、高校進学後初めて親から解放された気持ちになりました。勉強は小学校では算数的思考は分からなかったですが、中学校になり式を使った数学的思考に、ものすごく興味を持ち、数学がとても身近な科目に感じられるようになり成績も今から考えても不思議なくらい良くなりました。兄妹は4歳年上の兄、1歳年下の妹で、父は弟は兄の背中を見て育つので、兄をしっかり教育すれば弟はついて来ると言っていたそうです。個性的な兄だったこともあり、付いていくのが大変で同じ大学に入学した時に、今度は兄からも解放された気持ちになったことを思い出します。
高校一年生の時に運動部が合わなくて一時的に部活を止めていたときに、父から勉強と運動を両立させられないようでは人間が大きくならない。必ず自分に合った運動部を探せといわれ、同じことを担任の先生からも言われました。それがきっかけでバレーボールと出会い、高校、大学、社会人と運動を続け、たくさんの友人とめぐり合うことが出来ました。
学校時代の先生方、企業に入ってからの先輩方、海外生活で会った外国企業のトップの方々などそれぞれの場、縁で教わることが、いままでも、またこれからも多いと思います。
育児書やハウツー的生活指南書ではなく、世界の歴史、詩、小説、哲学、美術書など間接的ではあっても、生活を豊かにする本の乱読を。
自然体。
動物園、植物園など。また奥多摩など自然に親しめる場所。手足を動かして何かを作る作業場。
育てたというより育ってくれたという思いです。親も一緒に育ってきたのでしょう。子どもたちが幼稚園、小学生の時にニューヨーク転勤になり、いきなり現地校に入学、米国の教育を受けました。本当の意味の少人数教育、個性重視の能力別指導、多文化教育がなされており、子どもたちにとってはチャレンジ続きでしたが、帰国後日本と外国を比較することができ、成人してから海外で働きたいと強い希望を持ったようです。父親としては慣れないキャンプ、チェス大会の引率など、現地の子どものなかに入って自分の子どもを見たことは、子どもにとっても自分にとっても良い機会であったと思います。
妻は中学校の同級生で、もう50年近く付き合っております。それでも知らないことはたくさんあり、お互いあきない性格、顔もあり、日々新しい発見があります。基本的な姿勢としては、相手の世界に無理に入ろうとしないこと。お互いの立場を認めて、そばで応援する姿勢。こんなところでしょうか。
鼠(2009/07/15)
生年月日 |
昭和22年2月23日 |
出身地 |
東京都 |
現役職 |
学校法人田村学園 |
学歴 |
昭和44年 東京大学法学部私法学科卒業 |
略歴 |
昭和44年4月 三井物産入社 |
趣味 |
ゴルフ・ジョッギング・麻雀 |
家族 |
妻と2人の息子とその妻と3人の孫 |