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【子育ての秘訣/子育ての「いろは」】
自らを律する心の育て方
暁星小学校校長 佐藤正吉氏

子どもと自立
質的に豊かな時代は、ともすると困難に耐えることや努力することを避けようとする風潮を生み出します。
「楽に、便利に、汗を流さずに、気軽に・・・」を追い求める傾向にますます拍車がかかることが予測されるからこそ、家庭や学校では、起きてから寝るまでの生活習慣をしっかり身に付けさせたり、人とかかわる基本であるあいさつをしっかりとできるようにさせたり、他人に迷惑をかけないことを体験的に教えたりすることが大切なのです。その中心が、子どもに自律を身に付けさせることです。
人から言われて、指摘されて行動するのではなく、自らを律する心を育てることが全ての基本になると考えます。

どのような子どもに育ってほしいか
親は、我が子にこのように育ってほしいという一つの期待像をもっています。
昔話では、「気は優しくて力持ち」と表現していますが、これは男の子の理想的な姿を表しているのだと思います。
思いやりの心をもち、いざというときにはしっかりと自分を主張し行動できる人間像とでも言えるでしょうか。
しつけとは、どのような子ども(人間)に成長してほしいかということの表れだと思います。

ほめることと叱ること
ほめたり、叱ったりする日常の行為は、親がその子どもに何を期待しているか、どのように育ってほしいかという気持ちに基づいています。
そして、一人前の人間になるようにということが期待の根底にあるといえます。
「広辞苑」によれば、「一人前」とは、一人に割り当てるべき分量のことであり、それは大人になること、大人として扱われること、人並みに技芸などを習得したことを意味しています。
子どもは、ほめられたり叱られたりしながら、何がよいことで、何が悪いことかということを習得していきます。
ほめることと叱ることは、重要な教育の手段といえるのです。例えば、一度も叱られずに成長した人がいるとするならば、どのような人間になるでしょうか。
そこで、いつ、どのようにほめる(叱る)のかということが大切になります。
まず心しておきたいことが、多少の失敗は、前もって覚悟をしておかなければならないということです。
むしろ、小さな失敗を体験させることは大切なことです。「転ばぬ先の杖」という言葉がありますが、何から何まで杖をつくこと(前もって用意しておくこと)は、子どもの成長にとってマイナスの面がでることを賢い大人は知っています。

何を、どう叱るか
叱る背景には親の期待があるわけですから、何よりも大切なことは親の思いが表れることです。
子どもの行為に対して親が人間として悲しい気持ちになったことをそのままの形で表すことです。
また、叱って禁止しなければならないことははっきりと言うことが大切です。
いずれにしても、叱られたことを子どもが受け止めているかをしっかりと見ることが重要です。
ただし、期待通りに受け止めていないからと親の気持ちを繰り返し述べるのはかえって逆効果です。
受け止められないような育て方をしているのだとむしろ我がこととしての反省をするべきなのです。
叱り方について心すべきことと言えば、子どもを追いつめたり、突き放したりするような冷たい叱り方をしないということにつきます。

自律から自立へ
「君がしたことは、○○という言葉遣いをしたことでどれだけ友達の心を傷つけたかということが一番悪いことなのです。
だから、君は、友達にどのように謝ったらよいか考えてみなさい。」というように、行為の何が悪かったのかを具体的に指摘する叱り方は、比較的小さい頃や低学年には大切なことです。
逆に、高学年ともなれば、たいていの場合自分の過ちに気付いていることが多いものです。
それをさらに一つ一つこと細かくあげながら叱るのは、かえって子どもを反抗的にする場合があります。
「君がしたことはよくない。自分自身でどのようにしたらよいかをよく考えてみなさい。」というようにやや抽象的とも思える毅然とした叱り方が必要だと思います。

もちろん、どう叱るかは、その内容によって、子どもの状況によってなど、異なるものですからマニュアルがあるわけではありません。
しかし、親の適切な言葉かけによって少しずつでも自分で考えさせることが大切なのです。
ところで、これは妙に理屈を言わせるためではありません。
基本は、自分はどのように考え、どのように解決していくことが大切かと言うことを、小さいなりに考えさせていくことであり、それが自律へとつながると思うからです。
自分自身をコントロールできることが大きくなる上でとても大切なことです。それがいずれ自立へとつながっていくのです。

今、大切なこと
2009年起こった秋葉原の事件でも、「誰でもよかった」と報道されましたように、特段の理由もなくまさに衝動的とも思える犯罪が繰り返し発生しています。
確かに先行きが不透明な時代といわれる今日ですが、そうした時だからこそ、これからを生きていく子どもたちに必要なことは、「何のために生きるのか」「自分はどのようなことをするべきなのか」というしっかりとした目的意識と、自分をコントロールする力を身に付けることが大切なことと思います。
特に、自分を大切にすることと併せて他者を大切にすることがますます大切になることでしょう。自律から自立へ、心も体もたくましく生きる人間であって欲しいと願います。
羊(2011/4/11)


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